股関節の音が鳴る原因とは?
弾発股とは?症状、原因、治療法を徹底解説
はじめに
弾発股は、股関節に発生する可聴または触知可能な「スナップ音」が特徴的な疾患であり、スポーツや日常生活で股関節に過度の負担がかかることによって引き起こされることが多いです。この症状は、腸腰筋や腸脛靭帯が関与することが主な原因となりますが、発症のメカニズムやリスク因子についてはまだ完全には解明されていません。本記事では、弾発股の症状、原因、リスク因子、治療法などについて詳しく解説します。
弾発股の概要
弾発股は、股関節で音が鳴る現象です。痛みが伴う場合もあれば、痛みがない場合もあります。主に腸腰筋や腸脛靭帯が引き起こす音で、これらの構造が股関節内で動く際に発生することが多いです。音自体は無害であることもありますが、症状が続くと生活の質に影響を及ぼすことがあります。
弾発股の分類
大きく分けて、以下の二種類のタイプがあります。
-
内側型弾発股(腸腰筋型):
- 腸腰筋(大腰筋および腸骨筋)の腱が股関節を越えて滑る際に音が発生します。
- 伸展した股関節を内旋させる動作などで症状が再現されます。
-
外側型弾発股(腸脛靭帯型):
- 腸脛靭帯(iliotibial band)が大転子を超えて滑ることによって音が発生します。
- 股関節を屈曲から伸展に動かす際に音が鳴ることが多いです。
弾発股の原因
弾発股の原因はさまざまですが、主に以下の要因が考えられます。
-
反復的な股関節の動き:
- ダンサーや体操選手、ランナーなど、股関節を頻繁に回転させたり伸展させたりするアスリートに多く見られます。
- 特に体操やバレエのようなスポーツでは、股関節を極端に可動させることが原因となる場合があります。
-
筋肉の肥大や炎症:
- 内側型弾発股では、腸腰筋の肥大や外傷による炎症がリスクを高めます。これにより、腸腰筋が股関節内で引っかかりやすくなり、スナップ音が発生します。
- 外側型弾発股では、腸脛靭帯や大臀筋が肥大し、これらの筋肉が互いに摩擦を生じることで音が発生します。
-
解剖学的要因:
- 大転子が外向きに膨らんでいると、腸脛靭帯が動きづらくなり、スナップ音を引き起こすことがあります。
- また、股関節形成不全などの解剖学的問題も弾発股を引き起こすリスク因子として挙げられます。
-
過度な負荷:
- 太りすぎや肥満、または過剰に運動を行うことが、腸腰筋や腸脛靭帯に負担をかけ、症状を引き起こすことがあります。
弾発股の症状
弾発股の主な症状は、股関節で発生する「弾発音」です。これは、股関節を動かす際に、腸腰筋や腸脛靭帯が股関節内で摩擦を起こし、音を発することから生じます。音が鳴るだけでなく、以下のような症状も見られることがあります。
- 痛み: 一部の患者では、音を発生させるときに股関節の前部や外側に痛みを感じることがあります。
- 可動域の制限: 股関節を十分に動かせないことがあります。
- 違和感や不快感: 股関節を動かす際に不快感を覚えることがあります。
診断と検査方法
弾発股の診断は、主に病歴と身体検査に基づいて行われます。医師は、股関節を動かしながら、音の発生場所や痛みの有無を確認します。また、画像診断が診断の補助として用いられることもあります。
- MRI(磁気共鳴画像): 筋肉や腱の状態を詳細に把握できます。
- 超音波検査: 動的に筋肉や腱の動きを確認できるため、弾発股のタイプを特定するのに役立ちます。
- X線: 骨の構造や大転子の変形など、股関節の異常を確認するために用いられます。
弾発股の治療法
弾発股の治療は、一般的に保存的治療から始めます。多くの場合、症状が軽度であれば、以下の方法で改善が見込まれます。
-
休息と活動の制限:
- 股関節に過度の負担をかける活動を避け、安静を保つことが重要です。
-
理学療法:
- 股関節周りの筋力強化や柔軟性の向上を目的とした理学療法が効果的です。
- ストレッチや股関節の可動域を改善するエクササイズが推奨されます。
-
NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬):
- 痛みや炎症を軽減するために、NSAIDsが処方されることがあります。
-
アイスパックや熱療法:
- 痛みや炎症がある場合、アイスパックを使用することで症状の軽減が期待できます。
-
コルチコステロイド注射:
- 症状が改善しない場合、コルチコステロイド注射による炎症の抑制が行われることがあります。
-
手術:
- 保存的治療で効果が見られない場合、手術が検討されることがあります。手術では、炎症が原因となっている腸腰筋や腸脛靭帯の異常を修復することが行われます。
予防と生活習慣の改善
弾発股の予防には、適切な体重管理や股関節を過度に動かさないことが重要です。また、股関節の柔軟性を保ち、適切な筋力を維持することが予防につながります。スポーツを行う際には、股関節を過剰に回転させないように注意し、トレーニングの前後にしっかりとストレッチを行いましょう。
まとめ
弾発股は、股関節で音が鳴る現象ですが、その背後には様々な原因やリスク因子があります。多くの場合、保存的治療で改善が見込まれますが、症状が続く場合は専門医の診断を受け、適切な治療を行うことが大切です。股関節の健康を保つためには、日常的なストレッチや筋力トレーニングが重要であり、適切な運動習慣が予防につながります。
参考文献
Walker P et al. Snapping Hip Syndrome: A Comprehensive Update. Orthop Rev (Pavia). 2021 Jun 22;13(2):25088.