股関節外側部痛の原因
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Toggle大転子部痛症候群(GTPS)とは?
大転子部痛症候群(GTPS)は、股関節外側部の痛みの一般的な原因の一つであり、特に中年層の女性に多く見られる疾患です。このブログ記事では、GTPSの概要や原因、症状、診断、治療法について詳しく解説していきます。
GTPS(Greater Trochanteric Pain Syndrome)は、大転子部に発生する痛みや圧痛を引き起こす疾患群を指す総称です。
GTPS(Greater Trochanteric Pain Syndrome)は、大転子部に発生する痛みや圧痛を引き起こす疾患群を指す総称です。
具体的には以下のような疾患が含まれます。
- 転子部滑液包炎
- 外転筋腱障害(中殿筋・小殿筋)
- 外側股関節唇炎(external coxa saltans)
これらの疾患は、互いに症状や画像所見が重なり合うことが多いため、「GTPS」という用語が使用されるようになりました。GTPSは40~60代の女性に多く見られ、発生率は男性の2~3倍です。年間発生率は成人1,000人あたり約1.8人とされています。
GTPSの原因
GTPSの発症には、以下のような要因が関与しています。
1. 摩擦と微小外傷
腸脛靭帯(ITB)が大転子の上を滑る際に生じる摩擦が、GTPSの主な原因と考えられています。この摩擦により局所的な微小外傷が発生し、滑液包や外転筋腱に炎症や損傷が生じます。
2. リスク因子
以下のリスク因子がGTPSの発症リスクを高めます。
- 年齢の増加(40~60代が多い)
- 肥満
- 股関節や膝の変形性関節症
- 腰痛や脚長差
- 骨性拘束の低下による股関節の不安定性
GTPSの症状
GTPSは主に慢性的な股関節外側部の痛みとして現れますが、具体的には以下の症状が見られます。
- 痛みの場所:大転子周辺に痛みが集中し、臀部や大腿外側部に放散することがあります。
- 痛みの特徴:深部の鈍い痛みが特徴的です。
- 痛みを悪化させる動作:患側を下にして横になる、しゃがむ、脚を組んで座る、階段を上るなどの動作で悪化します。
また、症状の重症度には心理社会的要因が影響することがあり、これらを考慮した対応が必要です。
GTPSの診断
GTPSの診断は主に臨床所見を基に行われます。以下に、診断のポイントとなる要素を挙げます。
1. 触診とテスト
- 大転子の触診による圧痛:GTPSの診断において感度が80%と高いですが、特異度は47%と低めです。
- 片脚立ちテスト:片脚立ちで30秒以内に痛みが再現される場合、GTPSが疑われます。このテストは感度38%、特異度100%を示します。
- トレンデレンブルグ徴候:外転筋腱の部分断裂や全層断裂を診断する上で有用で、感度73%、特異度77%とされています。
2. 画像診断
- X線撮影:股関節の変形性関節症や他の疾患を除外するために使用されますが、GTPS自体の診断には有用性が限定的です。
- MRI:GTPS診断のゴールドスタンダードとされており、外転筋腱や滑液包の損傷を詳細に評価できます。
GTPSの治療法
GTPSの治療は、患者の症状や病態に応じて保存療法が基本となります。
1. 保存療法
- 活動制限:痛みを悪化させる動作を避けることが重要です。
- 理学療法:股関節周囲の筋力強化や柔軟性を改善する運動療法が推奨されます。
- 薬物療法:NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)やコルチコステロイド注射(CSI)が痛みの緩和に使用されます。
2. 手術療法
保存療法を6~12か月間試しても効果が見られない場合、手術が検討されます。ただし、手術は最終手段であり、対象は一部の患者に限られます。
保存療法を6~12か月間試しても効果が見られない場合、手術が検討されます。ただし、手術は最終手段であり、対象は一部の患者に限られます。
まとめ
大転子部痛症候群(GTPS)は、特に中年層の女性に多い疾患であり、日常生活に支障をきたす場合があります。正確な診断と適切な治療が重要であり、早期の保存療法によって多くの患者が症状を改善できます。股関節外側部の痛みに悩む方は、ぜひ専門医に相談し、適切な診断と治療を受けましょう。 GTPSは適切な管理で症状が緩和する可能性が高い疾患です。この記事が、GTPSに関する理解を深める一助となれば幸いです。
参考文献
Pianka MA, Serino J, DeFroda SF, Bodendorfer BM. Greater trochanteric pain syndrome: Evaluation and management of a wide spectrum of pathology. SAGE Open Med. 2021 Jun 3;9:20503121211022582.
