膝蓋腱炎とは
2025.03.28
今回のkey point
膝蓋腱炎は膝蓋腱の過度な使用(オーバーユース)による損傷である |
膝蓋腱炎のリスク要因は内的要因・外的要因が存在し、中でも外的要因ではジャンプが多いスポーツでは膝蓋腱炎の有病率が50%に達する |
膝蓋腱炎の治療は基本的に保存療法がメインとなり、筋力低下改善や柔軟性改善が治療の目的となる |
膝蓋腱炎(Patellar Tendinopathy, PT)とは?
膝蓋腱炎(Patellar Tendinopathy, PT)は、膝蓋腱の過度な使用(オーバーユース)による損傷であり、一般的に「ジャンパー膝」として知られています。
この症状は特にジャンプを多く含むスポーツにおいて発生しやすく、爆発的な動作による負荷の蓄積が主な原因とされています。
膝蓋腱炎の有病率はすべての年齢層で発生する可能性があります。特にエリートアスリートでは膝蓋腱炎の有病率が13%〜20%に達し、膝伸展機構に高い負荷がかかるスポーツでは40%にも及ぶことがあります。
一方、レクリエーションアスリートではトレーニング強度が比較的低いため、有病率は約8.5%と推定されています。
このことから、膝蓋腱炎は特に高強度のスポーツに従事する選手において深刻な問題となることが分かります。
膝蓋腱炎のリスク要因
大きく内的要因と外的要因に分けられます。
内的要因(Intrinsic Factors)
性別:男性の方が女性よりもPTの発症リスクが高い。
筋肉の柔軟性低下:腸脛靭帯(ITB)、大腿四頭筋、ハムストリングスの柔軟性が低下すると、膝蓋腱に過度な負荷がかかる。
筋力の低下:特に大腿四頭筋の筋力低下が膝蓋腱炎の発症と関連。
解剖学的アライメント:脚の長さの不均衡、膝蓋骨下端の形状、足のアーチの高さが影響を与える。
体組成:BMIが高い場合、膝蓋腱への負荷が増加する可能性がある。
関節可動域:足関節の背屈制限が膝蓋腱炎のリスク要因となる。
外的要因(Extrinsic Factors)
ジャンプを伴うスポーツ:ジャンプが多いスポーツでは膝蓋腱炎の有病率が50%に達する。
競技レベル:エリート選手の方が膝蓋腱炎のリスクが高い。
トレーニング負荷:週あたりのトレーニング時間や試合数の増加がリスク要因となる。
トレーニング環境:硬い地面での練習がPTリスクを高める。
ストラッピングや装具の使用:短期的な痛みの軽減には有効だが、長期的な効果には疑問がある。
PTの診断と分類
- 画像診断
X線:膝蓋腱部の石灰化や腱の腫大を確認。
MRI:膝蓋腱内の炎症や微細な損傷の評価。
超音波エコー:腱の肥大や血流増加を検出。
・重症度分類(Roels et al.)
軽症:スポーツ活動中に痛みを自覚するが、支障はないスポーツ制限なし |
中等症:スポーツ活動中・活動後に痛みがあるが、支障はないスポーツ制限あり |
重症:常に痛みがあり、スポーツ活動に支障があるスポーツ休止 |
最重症:膝蓋靭帯の部分・完全断裂手術などの処置 |
PTの治療
1.保存療法
エキセントリック運動(Eccentric Exercise, EE)や静的ストレッチと体外衝撃波療法(ESWT)との併用が有効。
股関節および体幹の筋力強化。特に大臀筋の強化が重要。
ストレッチにより下肢の柔軟性向上が有効。
2.スポーツ復帰の判断
VAS(視覚的アナログスケール)3/10以下であればスポーツ継続可。完全治癒後の復帰を推奨。
まとめ
膝蓋腱炎(PT)は、特にジャンプを多用するスポーツに従事するアスリートにとって深刻な問題となる疾患です。
発症リスクは内的・外的要因の影響を受け、特に筋力の低下や柔軟性の欠如が大きく関与しています。
診断にはX線、MRI、超音波エコーが用いられ、重症度に応じた治療が必要です。
リハビリにはエキセントリック運動や体幹強化が有効であり、スポーツ復帰には慎重な判断が求められます。適切な予防策を講じ、早期の対応を行うことで、膝蓋腱炎のリスクを最小限に抑え、アスリートが長く競技を続けられるようにすることが重要です。